サポイン補助金の書くべき内容を審査項目から予測 ~パート2~

本日はサポイン補助金の事業化面についての書き方をご紹介します。
この点は先日の説明会でも経産局担当者が重要になる部分であると述べていました。

事業化とはなにが問われるのか

事業化とは安定して収益を発生できている状態を指します。
サポイン補助金においては、公募要領10P目の以下の文章を指します。
(抜粋)
事業の補助対象は、製品化につながる可能性の高い研究開発、試作品開発及び販路開拓への取組までですが、この事業の成果を用いて、事業化までの道筋が明確に描けているものが対象となります。その為、研究開発計画の終了後1年以内までに、サンプル出荷等川下製造業者からの評価を受けることが可能な計画であることが必要となります。また、売上高(見込み)を具体的な根拠に基づいて設定するとともに、事業化に向けた体制やスケジュールについて明記し、この事業の補助対象期間の終了後5年以内を目処に事業化を達成する目標が策定できる事業である必要があります。

つまり、研究開発計画の終了後1年以内にサンプルを出荷して、補助事業完了後5年以内に会社の事業として動き出せているかが『事業化』と読み取れます。

より深く推察すると、
・研究開発だけをメインとしては 
・サンプルを出荷するために製品設計、出荷工程まで網羅して記載する必要がある
・製造業者(販売先)からのフィードバックをどのように受けるか
・5年以内に達成する数値目標の根拠を示す

上記が事業化の骨子とも言えます。

サポイン補助金

重要視される背景

事業化が重要視される背景には、ものづくり補助金では過去に投入された税金のうち約1%程度しか回収できていないという事実があることです。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、補助金を受けた事業で収益がでれば、その収益の一部を返還しないといけない「収益納付」という考えがあります。もちろん、収益納付を嫌ってあえて、収益を計上していないケースもあると思いますが、『補助金=ただのバラマキ』という批判が出ているのも事実です。
費用対効果が厳しく問われる中で、事業化に関しては審査員の目が厳しくなることが予想されます

ここで前回の「サポイン補助金の書き方パート1」で紹介した事業化面での審査項目をおさらいしたうえで、研究開発内容等説明書内の事業化部分を見ていきましょう。

抜粋すると、
『研究開発成果に係る製品等の事業化を達成するための計画を、以下の観点を踏まえて、具体的かつ明確に記載してください。』
と書かれております。

文中の以下の観点とは次の6つです。
・想定する国内、海外市場(現状、今後の動向)
・川下企業(顧客)ニーズ
販売促進戦略
・知財戦略
・販売先、川下製造業者等を含め
事業化の実現性

審査項目と照らし合わせると特に【販売促進戦略】、【事業化の実現性】が重要になると考えられます。
この2点に重点を置いて説明していきます。

サポイン補助金

販売促進戦略の書き方

まずは、大枠を次のステップで考えていきましょう。
①ターゲットは既存顧客or新規顧客のどちらに比重を置くか?
②今回、研究する技術とターゲットの親和性は高いか?
③どうアプローチするか?

各企業様によってこの点は違うと思います。重要なのは既存顧客をターゲットとする場合、今までどういった取引を行ってきたか(数量、金額、要求品質、納期)、できれば社名と取引先の事業内容なども記載して審査員がイメージをつけられるようにする工夫をしましょう。

また、新規顧客をターゲットとする場合、なぜターゲットに設定したのかというプロセスを書き出していきましょう。
(例:ターゲットする顧客は●●という分野において親和性が高いと判断したから)

さらに、以下を丁寧に説明する必要があります。
・どれくらいの規模の企業をターゲットにするのか
・またなぜそのターゲット設定になったのか

例えば、今回開発する自動車開発に対する新技術は革新性が高く、トヨタやホンダなどをターゲットにすると記載しても、審査員からすると「なぜトヨタやホンダがその技術を必要としているのか?」「そもそもコネクション自体あるのか?」といった具体性に疑問をもたれます。そういった部分を具体的なイメージが湧くように補強する必要があります。

例えば、「本事業における新技術はトヨタ社が進めている自動運転技術の1つである●●に対して大きく寄与する技術であると考えている。そのため当社の主要取引先で、長年トヨタ社の1次請けを行っているA社に協力を依頼し、トヨタ社に対して本技術の有用性をPRしていく予定である。また、自動車業界に対して深い知見を持つ外部専門家を招き、ビジネスプランの構築を行ってもらう予定である。」といった具体的にどうアプローチを行うかを丁寧に説明する必要があります

なお、販促戦略のネタを以下に書き出しておきます。
・銀行が主催しているビジネスマッチングにブースを出展
・各市区町村や産業振興センターなどが主催している展覧会などに出展
・異業種の交流会に参加し、本技術を横展開できないかを検討
・海外のメーカーなどに売り込みをかける

サポイン補助金

事業化の実現性の書き方

事業化に関しては参考になる素材があります。

事例からみた「事業化へのポイント」 – 経済産業省
過去のサポイン補助金の採択者の事業化を追った報告書です。あくまでも、採択後の事業化についての調査であるため、補助金の審査自体の報告書ではありません。しかし、こうした調査結果を踏まえて、次年度以降の調査に影響するのは事実です。
それでは、その中から特に参考になる部分を引用します。

5P目 事業化への課題より
a 専門性の高い新たな基礎技術であるため、その応用分野に対して製品コンセプトを確立させ、市場での競争力、使用用途およびターゲット市場を明確にする必要がある。B 社は~行動計画を設定するためには、対象業界の特性・慣行などをより詳しく知る必要がある

b ニッチな分野であるため、国内での応用分野に加えて、海外市場も視野にいれた販売戦略も検討に値する。~以下略

6P目 事業化専門家の支援より
支援内容(1) 「事業化への準備、製品コンセプトの明確化、差別化の再確認」より
① 新製品のサンプル提供、上市に先立ち、製品コンセプトを明確にして、ライバル社の製品との差別化を図ることが大事である。~以下略

支援内容(2)「課題の原因と対策の具体化」より
① これまでの B 社の販売促進手段は、関連技術のセミナー・展示会等を活用した新製品紹介・発表の場を活用してきたが、事業化には至ってない。B 社はこれらのセミナー・展示会等の機会を過信~以下略

上記赤文字部分を抜粋して検討していきましょう。

ターゲット市場についての調査

基礎技術であるため、市場での競争力、使用用途およびターゲット市場を明確にする必要がある。対象業界の特性・慣行などをより詳しく知る必要がある
⇒基礎技術は各分野に応用が利くため、なぜそのターゲットにしないといけないかを説明する必要があるということです。またターゲット業界の特性なども取り上げる必要があると解釈できます。つまり、ターゲット業界の市場規模、過去との比較、今後の見通しを示したうえで、なぜ参入できるのかを審査員に訴える必要があると考えられます。

多様な販売戦略

ニッチな分野であるため、海外市場も視野にいれた販売戦略も検討
⇒ターゲットの国内市場規模が小さければ、海外への販売戦略なども記載する必要があります。販売先の国名やなぜその国が販売先として対象となるのかを記載する必要があると考えられます。

競争優位性

製品コンセプトを明確にして、ライバル社の製品との差別化を図ること
⇒製品コンセプトとは「この技術が何に役に立つか?」を詳細に説明することです。
1つのパターンとしては
・川下の事業者がこういった問題を抱えている
・その問題を解決するにはこういった技術が望まれる
・ただその技術を開発するにはコスト、期間、開発体制で●●といった課題がある
・そのため●●の課題を克服するために補助金を利用して▲▲という事業を行う
とすると、審査員に対して「この技術は何に対して役に立つか。」を明確に訴えることができます。

セミナー・展示会だけでは弱い

これらのセミナー・展示会等の機会を過信し
⇒背景には販促戦略をもっと練ってほしいという国の意図が感じられます。

セミナー・展示会などへの出展だけでは弱いと捉えられるため、もっと具体的に踏み込み、
・事業所以外の地域のセミナー・展示会にも出展を行う
・展示会に出展する際は外部の専門家にも同行してもらい、人脈や商品紹介などにもアドバイスを受けるようにする
・開発する技術に関連しそうな分野を連想して、他分野への横展開ができないかなどを考える。

まとめ

背景としては年々事業化項目については審査が厳しくなると予想
(1)全体の骨子
・研究開発だけをメインとしては 
・サンプルを出荷するために製品設計、出荷工程まで網羅して記載する必要がある
・製造業者(販売先)からのフィードバックをどのように受けるか
・5年以内に達成する数値目標の根拠を示す

(2)計画の勘所
・販売促進戦略
・事業化の実現性

(3)販売促進戦略
①大枠の考え方
・ターゲットは既存顧客or新規顧客のどちらに比重を置くか?
・今回、研究する技術とターゲットの親和性は高いか?
・どうアプローチするか?
②深堀りのポイント
・どれくらいの規模の企業をターゲットにするのか
・なぜそのターゲット設定になったのか
・審査員がイメージしやすいように具体的に記載

(4)事業化の実現性
・ターゲット市場についての調査
・多様な販売戦略
・競争優位性

補足として数値目標も作成して、達成に向けたタイムスケジュールも詳細に作成するようにしましょう。

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